head_img_slim
HOME > 研究内容 > 大規模構造の振動分析技術の開発

大規模構造の振動分析技術の開発

自動車構造の振動は乗り心地や車内騒音に影響を与える要因として,開発段階で十分な考慮が必要となります. 特に近年の自動車開発の現場では開発コストの面から,実車を用いた試験を削減し,シミュレーションを主体とした開発へ移行するために, 振動分析技術のさらなる発展が求められています.

そんな中コンピュータの性能向上に伴い,自動車構造の振動解析に用いられるCAEを用いた有限要素解析では, 図1に示すような緻密なモデルが使用され,正確な振動現象の予測が可能となっています. しかしその反面,モデルの自由度が非常に大きくなることで,解析から得られる固有モードの数が膨大になり,対策を施すべきモードの判定が難しくなっています. その結果,高度な振動予測を行うことで開発初期の段階で考慮すべき事柄が増え,全体として開発にかかる時間の増加を招いています.

図1 自動車構造の有限要素モデル


しかし,多数の固有モードのモード形状を観察すると,図2に示すように「車体構造全体が振動するモード群」と 「一部の部材のみが局部的に振動するモード群」に大別できることがわかります. 固有モードを上記のように分類できれば,解析者の需要に応じて,固有モードの取捨選択が行える上,振動の原因が単体部材によるものなのか, モデル構造によるものなのかを確認できる等のメリットが期待されます.


図2 固有モードの分類


本研究では,各固有モードにおける単体部材の局所的な振動を「局部振動」として定義し,これを除去する操作を通して固有モードの分類を行っています. 局部振動を除去するプロセスを,図3に示す緑のパネルとその4辺を囲む青のフレームから成る構造体を使って説明します.


図3 パネルとフレームから成る構造体


この構造体が図3のようにパネル,フレームともに変形した場合に,パネルの変位を分解することを考えます. 図4に破線で示したフレームとパネルの結合部(結合領域)に注目すると,拘束モード法の考え方に基づいて, パネルの変位を「パネル単体の変位」と「結合領域の変位の影響による変位」に分けることができます. ここで「パネル単体の変位」とは,結合部を固定して得られるパネルの変位であり,「結合領域の変位の影響による変位」は結合部の動きに追従する変位です. 後者は構造全体の振動を表していると考えられます.そこで本研究では前者の「パネル単体の変位」を局部振動と定義し,これを除去します. この操作を通して,各固有モードから局部振動を取除き,構造全体の振動を残します.



図4 パネルの変位の分解イメージ


上記の操作を固有モードごとにモデルを構成する全部材に対して行い,除去前後の周波数応答関数を算出します. 除去後の周波数応答は図5の赤線で示すように,局部振動除去によって局部振動のモードのピークが落ち,構造全体が振動するモードのピークが得られます. また局部振動のモードに注目することで,図5の青線で示すような局部振動のモードが現れた応答も得られると考えられます. 以上の操作により,自動車車体から得られる多数の固有モードを合理的に分類できます.


図5 周波数応答による固有モードの分類イメージ

ページトップに戻る