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ヒートシールの接着力評価

1. ヒートシールにおける非破壊接着力評価の必要性

ヒートシールとは,薄い熱可塑性樹脂のシートを熱で溶かして接着する技術です.ヒートシールは高い密封性と剥がしやすさを両立できる包装技術として,食品,医薬品,電子部品などの包装で広く利用されています.例えば,図1,2に挙げる容器にこの技術が用いられています.

便利なヒートシールですが,ヒートシール部の接着強度は加熱する温度や時間に敏感なため,トラブルなどで加熱条件が崩れると所望の接着力や剥がしやすさが得られません.こうした接着不良は内容物の漏れやバクテリアの侵入,開封の困難などを招くため,製品の検査が重要です.

この課題に対して,従来はシール時の温度分布やシール部厚さなどの間接的な指標から接着力を推定する手法が用いられてきました.しかし,より直接的に溶けた部分(接着面)の機械的性質を測定し,それに基づいて接着力を評価する方が信頼性は高いと考えられます.この点では実際にヒートシール部を引き剥がす剥離試験が最も信頼できますが,製品のすべてに実施することは不可能です.


図1 ヒートシールが用いられているパウチ容器

図2 ヒートシールが用いられているカップ型容器


(図1 引用先:http://www.toyo-seikan.co.jp/product/for-foods-pauti/)

2. 超音波を用いた接着力評価手法の提案

そこで,本研究ではヒートシール部に超音波を当て,内部の接着面で反射,または接着面を透過した超音波を利用する非破壊の接着力評価手法を提案しています.ヒートシール部は内部に層状構造をもつ膜のため超音波の挙動は複雑ですが,瞬時振動数に着目することで接着力を評価できるという実験結果を得ています.

図3は実験結果の一例です.(a)は測定された超音波の波形,(b)は対応する時刻の瞬時振動数です.グラフの黒,赤,青の線はそれぞれシール強度 5.9N, 7.9N, 9.2N に対する結果を示しています.また,(c), (d)はそれぞれ(b)中のI, IIの部分の拡大図です.(a)の超音波波形はシール強度によりわずかに振幅が異なっていますが,それぞれを明確に区別するのは困難です.一方,(b)~(d)の瞬時振動数はシール強度が大きくなるにつれ極値が後方にシフトしており,シール強度による違いが明確に確認できます.

本研究では,こうした実験のほか,数値シミュレーションによる受信波形の予測と再現を行うなど,実験と解析の両面から提案手法の確立を目指しています.


図3 超音波波形(上段)および振動数の時間変化(下段)

※左から順に接着力が増加している